研究授業A/研究協議

「ハイテク実験音楽授業」

授業者:大阪府立旭高等学校教諭 津川 昌司

 ポピュラー音楽を、音楽の授業の中で、どの様に扱いどの様に展開していくかを研究課題として、合唱をしたり、グループ演奏をしたりする上で、マルチトラックレコーダーやコンピュータ、PA装置を使った展開等、過去数年間の実績を蓄積してきたことの発表である。指導者は最初に学校を紹介し、今日の発表が欲張った内容であり、時間短縮の意図を持って3年生の出番となったことを前置きし、簡単に機材の説明をして授業にはいる。
 1曲目は、ウォームアップを兼ね、平素からよく歌っている「THE CRUER WAR」である。8トラックMDレコーダで予め準備してある音を流し、4つのスピーカの前でパート別にかたまって歌うよう生徒に指示していく。次に、生徒は8本のマイクの前に立ち、先生のハーモニーディレクタの和音伴奏でコーラスをする。徐々に伴奏の音量を下げ、最後はアカペラとなる。こうすることで、ハーモニーの美しさを感じ取らせ、バランス感覚を養い、楽器がなくても何時でも何処でもコーラスが出来、音楽を楽しむことを意図してやっているとのこと。この曲は最後に原曲のCDを流し、曲の雰囲気を把握させながらコーラスすることで終わった。
 2曲目は、曲の作り方を紹介する意図を持って、「HAPPY×2 BIRTHDAY」を取り上げた。最初の音取りには8トラックMDレコーダを使い、メロディーをパート別に鳴らし、生徒はそれぞれのスピーカの所へ行ってメロディーの音取りをする。次に、原曲を流し、手足によるリズムうちの練習をした後、ハーモニーディレクタによる和音伴奏でハーモニーの練習。更に、ベルトーン等少し困難な部分の練習をし、最後にはコンピュータでカウントを鳴らして、手足のリズムうちを入れたコーラスを仕上げる。
 3曲目は生徒がとても喜んで取り組んだ曲として「Hail Holly Queen」を簡単に紹介する。また、この曲を演奏している間に、次に発表する楽器の準備をする。
 最後の「怪獣のバラード」では、各楽器の技術的なことは、すでに指導されており、前述と同じ方法で、メロディー・ハーモニーの練習から、コンピュータと楽器による伴奏で、コーラスをして研究授業を終えた。生徒はどの曲に対してもとても生き生きと楽しそうに演奏していて好感が得られた。
 引き続き行われた研究協議では、指導者から授業の解説、指導の心得について補足があり、質疑応答に入った。「教材選択時の基準は」とに質問に「何時までも自分がやっていて飽きない曲、バリエーションのある曲」と回答。「授業に取り入れる機材は出来るだけシンプルな方がよいのでは」という質問に「ドラムを入れてから音量のバランスをとるため、大がかりな機材の導入となった」と説明される。
 講師の保科洋先生からは「生徒が自分から積極的に歌っていた。歌いたい演奏したいと思って初めて聞く人を感動させられる。音楽で教えるのか、音楽を教えるのか、バランスをとって進めることが大切だ。今日の授業では、音楽を通しての人間教育を見せていただいた。」と指導助言をいただいた。



研究授業B/研究協議
「リズムと打楽器アンサンブルへのいざない」
授業者:大阪府立渋谷高等学校教諭 竹森 眞夫

 研究授業はまず1年生の授業から始まった。非常に流れるような導入で独特のブレストレーニングから発声練習へと続き、校歌を合唱し、そして展開へと移っていった。
展開はまず4拍子の感じをつかませるところからリズムのパターンの模倣、変形を行ったが、実授業ではかなりの時間を費やしたとのことである。そして3拍子、4拍子のリズム練習に移っていったが、ここまでの内容はソルフェージュに入る前段階のものということである。その後、プリントのソルフェージュ課題を声を出しながら叩く練習(アンサンブルをしながら)。大体111曲くらい2学期の中間あたりまでこのテキストに取り組むそうである。続いてボディーパーカッションに移り、1年生までの授業が終了。続いて行われた2年生の授業では大阪府人材バンクから専門家を授業に派遣して貰っているそうで、当日も手伝いにきており、実際、生徒たちが太鼓の演奏をしている中を見て回りスティックの持ち方叩き方の指導をしていた。打楽器は一つ打ちの基本からスタート。4分音符から8分音符に移行。徐々にテンポをあげる。次に5つ打ちや4分、8分、16分音符等の休符も含む様々なパターン練習からドラムマーチへと進む。ドラムマーチではまず声を出してパートを歌い、その後多人数でのドラムマーチ練習に移った。3学期には打楽器アンサンブルに移っていくとのことであった。この授業の様子は過去の授業のビデオを使い説明された。授業は約25〜30分が打楽器に、50分くらいを歌唱などにあてているとのことであった。
最後に4声のアカペラで「若人の歌」を歌って、終了した。授業の場面転換も歌を歌わせながら転換をするなど、とにかくよく工夫され流れに乗ったメリハリのある授業であった。
研究協議では、時間のたつのを忘れるほど盛沢山の内容が協議された。授業者からは、自己表現として音楽を楽しむ為にソルフェージュが必要であることや、打楽器の演奏を通して生きる原点を見つめて欲しいという指導のねらいが述べられた。
助言者からは、「生徒は緊張しながらも、生き生きと演奏をしていて心を打たれた」と授業の印象が述べられ、「リズムは楽曲の創作や演奏表現においてとても大切な要素であり、リズムが生きている音楽はすばらしい。しかしリズムというものは無意識的な存在になってしまっていることが多いのではないか」という問いかけがなされた。そして音楽における感情表現がリズムに密接に関係していることや、打楽器アンサンブルという教育システムによって、協調性や集団の中で個人というものを表現する力を培うことができることが述べられた。また、打楽器の基礎的な教材を利用して、楽典的な勉強や、旋律の創作への展開もできるのではないかという視点も提示された。
参加者からは、ソルフェージュ指導の年間カリキュラム及び、譜読みの工夫についての質問が出された。また学校に多数の打楽器をどのように揃えたのか、音が大きな事による周囲からの苦情対策について、人材バンク登録制度等にも話題が及び、協議を終了した。



研究発表A
「“異文化に触れる”〜民族音楽の楽しみ〜」
発表者:大阪府立阿倍野高等学校教諭 松川 晶子

 この発表は、前任校でのH.7〜H.11年に行われていた授業についての発表である。現在は、転勤されこの科目による授業は、行われていない。
 音楽U以外に2年生の選択科目として、「その他の科目:鑑賞演習」が設定された。音楽選択性以外の者も選択可能な科目であった。
 この科目の開講にあたっては、本校生徒に興味をもたれて なおかつペーパーテストがない科目として、提案され開講にいたったという。
 7年前の開講当時は、映像資料や音源などまだ手に入れにくく、生徒に受け入れられる資料集め(音源・映像 資料つくり) が難しかった。民族音楽といっても音楽だけでは授業にはならない。興味をひく資料作成と自らの勉強も含め手探りの中の開講だった。
 当日は、集められた参考文献や実際の民族楽器なども用意していただき 実際に当時使われていた、手作りのテキストをもとに発表された。発表の概要を順に追っていく。
 モンゴル:(ホーミーが流れ会場が、エキゾチックムードに包まれる。)モンゴルが、どこにあるか知らない生徒がほとんどであるが 自然や服装食事などの写真や、VTRを交えると興味を持つことが出来る。しかし「変なもの」という印象をもつ生徒もいなくはない。
 タイ:マホーリー(木琴の合奏)へと移る。暖かい雰囲気、のどかでゆったりしているのは、気候 生活と密接に関連している。日本とどこか似ている。海は国を隔てているように見えるが、文化は、海を道にして、伝播していくのだ。
 インド:(ヴィーナの調べが会場を包んだ。)インドといっても北と南では、大きな違いがいろいろな面においてあるが、生徒にはその違いが地理や歴史の面からもとらえにくく、また、ヴィーナの音自体が聴きにくかったようだ。北のほうは、いろいろな文化の影響を受けてきたことなどさりげなく触れていった。また音楽理論においては、季節・時間によっていろいろ難しい法則があるなどにも触れられた。
 しかし、まだ生徒には聴き辛いようだ。
 トルコ:トルコのように、西洋に近くなると生徒には聴きやすくなるようだ。トルコの軍楽隊など、少し前に日本のTVで流れたせいか、親しみを持ったようだ。身近に感じるのは、いかに常日頃から接しているかが関わるようだ。
 しかし授業をされて、宗教的な背景にも触れる必要があることを感じられたという。
 グルジア:美しい男性合唱で有名な国。「拍」のない音楽。生徒には、拍子があるのが当然と思っていただけに「どうやって、あんなにきれいにあうんやろ?」と感銘を受けたようだという。この頃になると、変な音楽 (注:生徒の印象)にも慣れてくるらしい。
 そして、ロシア〜ヨーロッパへと移りその土地土地に、特徴的な楽器や音、またその背景を交えて、説明されていった。紙面の都合上割愛させてもらうが、限られた発表時間の中に、アフリカ・南北アメリカ・オセアニアをふくめ発表された。
 発表の合間に、持参された民族楽器を大会参加者に示されたが、皆さん立ち上がったり覗き込んだり興味を持たれたようだった。
 短い時間内に世界の民族音楽について発表されたが、底流を流れるものは、「世界には、いろいろな文化の違いがある。 優れた・劣ったではない違った文化ということを受け入れてほしい。」というものだった。
 実際には、数年前に行われていた授業の実践報告という形の発表であったが、盛りだくさんの内容を短時間の制約された中に、うまくまとめられていた発表であった。



研究発表B
「音楽教育におけるコンピュータ利用の可能性」
発表者:大阪府立佐野高等学校教諭 大塚 晃一

 府高音研でのコンピュータ音楽部会の活動状況を始めに述べる。各個人でコンピュータを使っていろいろな試みをやっていた頃でしたが、一人でやっていては何も分からないので、仲間が集まって情報交換を始めたのがきっかけでした(1994年に前身のコンピュータ研修準備会が発足しました)。実際の個々の問題をこの会に持ち込み、自分たちの問題として取り組む体制ができ、「その他の科目」としての授業「コンピュータ音楽」をサポートするあたりから活動が軌道に乗ってきました。コンピュータの環境がどこの学校でも揃うようになってきているので、授業へ取り込むことをテーマに活動を行ってきました。研究会全体の研修でも「コンピュータ音楽研修会」と銘打って、昨年から2年間ほど活用されるに至っています。
 授業でのコンピュータ利用には、賛否両論がありますが、失敗してもすぐにやり直せるコンピュータは、テンポやキー(移調)も自由自在です。データについては自分で納得する形にまで作っておく必要がありますが、歌の伴奏をさせれば、指導者は歌唱指導に専念できますし、(合唱指導では特に有効な場面が考えられそうです、本日の津川先生の研究授業でもそういった場面がありました)ギターの授業では、バンド演奏などで伴奏を付ける等リアルな雰囲気が体験でき、メリットも大きいのではないでしょうか。
 中でも、コンピュータを一番活用できる授業は作曲であると考え、今回、総合学科のある大阪府立松原高等学校での取り組みを紹介致しました。教科名称は「コンピュータ応用A」、1クラス30名程度で、3年生の選択授業として開講しています。年間授業計画として、コンピュータの簡単な使い方やソフトの説明、確認から始まり、校歌やラジオ体操の曲を用いて、強弱や音色・テンポなど様々なバリエーションをつける練習をふまえ、最終的にはバンド譜の作成・発表までを設定しています。生徒一人一人がコンピュータを用いてパート別に演奏したり、全体からベースパートを抜いたものを試奏し、ベースの大切さを確認する作業を、担当教諭がチェックする様子がビデオで披露され、解説されました。自由曲の作成では、特に熱心に取り組む生徒達の姿がみられ、内容の濃いクラスになっており、自分で楽器の演奏はできなくても、オリジナルの音楽を作り、それが実際の音として響く喜びや達成感を生徒達は味わうことができるという担当教諭の解説は、説得力のあるものでした。
 質疑応答では、「コンピュータ音楽が目指すものとは何か」「授業には、より簡単で、単純なコンピューターソフトを利用するべきである」等の積極的なご意見を頂き、音楽教育の本質まで踏み込んだ内容となりました。それ程、コンピュータ音楽は可能性を秘めているといえるのではないでしょうか。
 本部会としては、音楽を奏でること、かつ様々な音を実感することが、コンピュータ音楽の目指すものととらえています。あくまでも、主体は音楽であり、コンピュータは手段であるという立場から、各コンピューターソフト会社に、より使いやすい授業用ソフトの作成を依頼する働きかけも行っております。音楽で教えるのではなく、音楽を教えるという姿勢で、今後も研究し、活動していきたいと考えています。




パネルディスカッション
「音楽教育の目指すもの?中学校教員を交えて」


パネラー
寺本  孝(三原町立さつき野中学校教諭)角田 圭介(大阪市立桜宮高等学校教諭)
塩見 正明(岸和田市立春木中学校教諭)速水 正子(四天王寺高等学校教諭)
河村 和子(堺市立登美丘中学校教諭)
コーディネーター
角谷 史孝(大阪府立高津高等学校教諭)

 2003年度からの新学習指導要領に準拠した教育が実施され、それに伴う単位数の見直しが行われている今日、中学校教育の現状をうかがい、高等学校のあり方・取り組み・方向性などを考えていくディスカッションにしようと提示された。
会場に出席した約200名も、何かヒントを得ようとする意気込みが感じられる中、話が進められた。
特に中学校からは、VTRによる生徒の音楽発表の様子など具体的に発表された。
〔最近の生徒の傾向〕
 以前の生徒と比較して変化してきた点が高校側から述べられた。
・読譜力の不足
・歌わない生徒、1オクターブ下げて歌う生徒、
 感情表現の苦手な生徒の増加 
・クラブ活動が持続しない生徒の増加
・複雑なリズムや音を聞き取る力の増加 等
(それに対し、中学校から具体的にどう取り組んでいるかが提示された。)
・縦の歌詞を読んで歌う、音符に仮名をふりその字を見て歌う生徒に、音符を見る習慣を付ける。
・変声前の生徒には、耳のそばで歌ってやるなどのきめ細かい指導を、パート練習のたびに繰り返して行い、励まし続け、少しでも音があったときには、「それでいいんやよ。」学年の終わりには「ハーモニーができたねえ。」とほめる。そして校内合唱コンクールや、卒業式の合唱では、混声四部合唱を歌えるようになるまでに育てる。
・【校内合唱コンクールのVTR】
( すばらしい合唱に、会場からため息が漏れる。)

〔学校教育の変化に対しての問題点〕
・教師が専門外のクラブを指導する技術面の困難さ
・授業数の削減、教師の削減、設備の不足
・音楽を教える以前に生活指導の必要性
・進学校での5教科を重視する傾向
・中学校の共通教材の廃止
・和楽器の導入?予算は無い、教師も演奏できない
(それに対して)
・班でアルトリコーダーの運指の教え合い。(会場から共感の笑いが)
・選択授業に箏を取り入れ、外部から講師を呼び、本物の日本音楽の指導を受けている。
【VTRで発表の様子を会場に紹介】
・学校全体の行事に年間を通して合唱を取り入れ、常に歌える雰囲気作りをしている。

〔学校で音楽教育が必要か〕
・利益優先の社会では、芸術教育は難しい。
・教材の精選をしながら、時間数削減の中で工夫する。
・生きる力を伸ばす重要な音楽授業の必要性を、学校の中で主張し、またそれに見合った授業をする努力をする。

 最後にまとめとして〔音楽教育目標達成のための留意点〕が述べられた。特に、基礎基本を重視することが個性をも伸ばす事につながる等が強調された。

〔質疑応答〕
 中学校の先生に対し、授業時間が減ったとき具体的に何を減らそうと考えておられるのかという質問があった。
・音楽史を美術史等と共に文化史の中に入れ、総合 的に学ぶと効果的である。
・歌唱指導を中心に行い、合唱は学校全体で取り組む。
時間が無く質問はお一人にとどまったが、解散後もパネラーの先生方に質問は続いていた。


高等学校部会記

平成10年 8月17日 高等学校部会として参加の意思表示をする
    (これまでに参加の有無の検討を重ねる)
平成11年  5月14日  府高音研総会で全日音研に取り組むことを報告
平成12年  3月 9日  大阪大会拡大実行委員会(市立済美小学校)
    事実上の旗揚げ式
        5月19日  府高音研総会で全日音研に向けて副会長を置く
    1年かけて発表者の選出
平成13年  5月11日 府高音研総会 高校部会実行委員会組織提示
    大阪大会の概要を発表、部会大会の内容決定
  6月29日  高等学校部会第1回実行委員会 各パートでの役割分担
  7月〜8月  大会記念誌編集作業
  9月20日 大会記念誌最終編集会議
  10月15日  全体会 係教員打合会
  10月12日  高等学校部会第2回実行委員会 実施運営要綱
  10月16日  パネルディスカッション最終打ち合わせ
  10月19日  袋詰め作業
  10月24日  全国理事会 前日準備
  10月25日  高等学校部会大会当日
  10月26日  全体会当日